昨日は、第12回、教員のためのセミナー(北里医史研主催)でした。小曽戸部長に相談し、始まった企画です。医史研の客員研究員がおもな発表者です。教員、教員予備軍が受講対象なので、一般の方には情報がまわっていないかもしれません。
ぼくは、補虚写実の考え方は『内経』が出土文書から受け継いでいる、という視点で発表しました。この視点は、白杉悦雄先生の論文を参考にしたものです。論文を読んだだけではピントこなかったのですが、自分から整理してみるとよく理解できました。
林克(元大東文化大学教授)によれば、いまや、出土文書を扱わない中国古典の研究はあり得ないそうです。『内経』の研究はもちろん必要だとして、それをさかのぼる文書が出てきたからには、きちんと研究しておかなければ、その学説は危ういのだそうです。
補虚写実には、おおむね4タイプあります。
①養生から学んだ、腠理虚、邪気実。
②養生から学んだ、腎精満、腎精空。
③医学から受け継いだ、気の有余・不足。
④医学から受け継いだ、血の有余・不足。
①は、邪気を排除し精気を集める補瀉。
②は、満杯になったら外に出し(射精)、外に出したら貯まるのをまつ。補瀉。
③は、気有余の熱、気不足の寒、の補瀉。
④は、血有余の充血、血不足の虚血、の補瀉。これは脈状診で決める。
①と②の瀉は、外に出す。③と④の瀉は、外には出さない。
②の補は、貯まるのを待つ、ので時間がかかる。③と④の補は、凸凹が調整されればよい(地ならし法)ので、時間がかからない。
邪気もしくは外邪という表現を使う場合は、①のみ。②③④で、実を邪気というのは、本来の使い方ではない。
③④は地ならしして、程よい真ん中にもっていくのが補瀉。①は邪気を排除して、精気を補うのが補瀉。程よい真ん中ではない。②は満杯と空っぽを繰り替えすのが補瀉。程よい真ん中でもなく、邪気の排除でもない。
4つのタイプは立ち位置もゴールも違う。これを一緒くたにして補虚写実を論じていたのであるから、わかるはずがない、混乱するはずである。
きちんと理解して、緊張感をもって行動する。こういう基本ができていなかったとつくづく思う。適当に解釈して、適当に治療する。鍼灸の神さま、怒っているんだろうな。
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