数年前に、安徽中医薬大学に招待されたとき、宏村という古民家街を観光したことがあります。
古民家は、家をロの字形に屋根をくみ、真ん中は開けて、天井(てんせい)とよぶ、空がみえる、雨がふきこむ空間が設けてありました。
案内者の解説によれば、風水思想にもとづく、天地と一体になる空間で、四方向の雨水が入り込むので、四水帰堂というそうです。吉相ですから、家の中に雨水が吹き込んだごときは、気にしないそうです。
吉相かどうかはわかりませんが、「天地と一体になる、」というのは、大事な思想だと思います。日本でも、かつては雨戸をはずして解放していましたから、中国の影響があったのかもしれません。
現今の住宅では、開け放つことはほとんどないですから、基盤になる思想が変わったのだと思います。それで住宅が閉鎖的になり、そして人間も閉鎖的になっているかもしれません。家が陰、外が陽だとすれば、陰陽交流が断絶しているといえるのではないでしょうか。
風水では、お墓のことを陰宅といいます。生きているあいだの住まいが陽宅です。ご先祖の陰のお蔭で、今の陽が有るわけです。陰陽が交流しているととらえるようです。死後、お墓を作っておしまい。なのでは有りません。
こうしてみると、わたしたちが陰陽思想を学んでいるといっても、机の上だけで、表面的な理解にすぎないなあ。
住宅といい、お墓といい、生活の中に陰陽がとけ込み、人生の中で陰陽を味わい体感しなければ、陰陽の真の理解を得ることはできないでしょう。
以上のことを踏まえると、わたしたちが、陰陽だ、五行だといっているのは、表面的理解にすぎない、本当のところは理解していないと思います。西洋医学を批判するまえに、わたしたちの「東洋」を、生活レベルから自己批判せねばならないようです。
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