2018年2月12日月曜日

孔子と老子②

『論語』の雍也篇に「今、なんじは画(かぎ)れり」(今のおまえは自分からみきりをつけている)という文章があって、力は足りないと腰が引けている弟子の冉求を説教しています。孔子の説く道が、遠く険しいので、自分には歩ききれないから、自分で見切りをつけたのです。

 なぜ遠く険しいと思ったのか。仁斎は「この道が高いことだけをみて、初めはそれほど高くないことがわからない。この道のなしがたいことだけを見て、根本はそんなにむつかしくないことがわからない」と解説する。ようするに冉求は、高い壁を見て畏れているだけで、そこを登る階段があるのに気がついていないというのです。

 仁斎の説明は、『老子』六三章「天下の難事、必ず易きより作(おこ)る」に近い。どんな難しいことでも、一歩ずつ進めば必ず成し遂げられるのだ。しかし、仁斎は『老子』を参考にした気配がないから、『論語』『孟子』の中から孔子の素意をあぶり出したのだと思われる。

 いずれにしても、仁斎にも、老子にも、「難しいこと」は無いようである。

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