2017年7月10日月曜日

森共之のコメント(その2)

 ふたたび、『老子国語解』72章から。
又肉食を禁すること、神代の始めにはなきことなれども、日本は異国とちがひ、米穀も甚だ味厚美なる上、何国(いづく)も海辺遠からずして。常に生鱗の魚類を食ひ。奉養満足せるに。脂らを多き獣類までを食ふときは。其の害少からず。今も肉食を好むもの。血を吐き。或いは癰疔を生じ。或いは癩病となること多し。第一、魚鳥品多なるからは。養奉は余り有り。ことに六畜は人を(たのみ)にして生を為し。人の労をたすくるものなるを。無益の口腹の欲のため殺さんこと、不仁の基たるべければ。俚俗愚昧なる者の為めに此の道理をば。のたまはずして。神前に憚り有りとて、肉食を禁じ死穢を(きら)ふとの深戒。遠く後代を(はか)り。切に人生を(あはれ)むの神慮、濬哲寛仁ありがたきことならずや。
共之先生は肉食を制限せよという。
 ①食べ物が美味しい日本。魚介類が豊富な日本。それで十分ではないか。
 ②自分の口福のために肉食するのは、無益の殺生をするのは、深く戒めるべき。
 ③肉食者は、血を吐き、癰疔を生じやすく、癩病となることが多い。

 今、欧米でビーガン(完全菜食主義者)が増えているそうですが、むやみに家畜を殺さない、動物を殺さない、という意味では共之先生に共通するところがあります(共之先生は魚介類は認めているので、共通していないといえば共通していない)。そこまでつきつめないにしても、自分の欲望のために過剰に肉食をするのは、③の病気予防という意味でも、やめたほうが良いと思う。

 しかし、江戸時代には、結構肉食していたんですね(上の階級の人だけでしょうが)。そういえば、後藤艮山も、下手な補法よりも、肉を食った方が体力がつく、と言ってました。


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