2016年4月4日月曜日

張士傑先生

 国家級老中医。1931年生まれ。御年85歳。


 今年も張士傑先生の4回の治療を受けてきました。朝の8:30~11:00までが診療時間ですが、朝一番に治療を受けて、そのまま居残って、診療の一部始終を見てきました。ずうずうしくも。患者さんは、ぼくが居ようとも、居ないがごとく、先生と話し、どんどん脱ぎだし、ベットに横たわり、治療を受けていました。日本だったら、「誰! この人」「出て行って欲しい」と言われるところ。ぼくはぼくで、何事も無かったように、居座って、カルテをみ、治療を見学しました。とっても貴重な体験でした。

 治療時間は、1分~2分くらいでしょうか。3分くらいか。治療は5分という日本の先生がいましたが、それを上回ってます。今回は、左右の、大谿、臨泣、大衝、足三里、陽陵泉、合谷、腕骨、外関、風池、太陽でした。使っている鍼は、30号鍼(10番)で、鍼体は30ミリくらいか。それを手でも足でも、迷い無く、得気を目標に、つぎつぎ刺していきます。刺す位置はアバウトですが、刺針転向法を使って的確に得気を得ています。鍼先で探しているような感じです。技芸は、年をとればとるほど味がでるといわれますが、目の前で展開されていたのは、きっと至芸というものなのでしょう。50、60はな垂れ小僧、まことにしかりです。日本の鍼灸師は、味が出る前に亡くなってしまう人が多いので、そのあたりが残念なところです。

 至芸だけでは、上手な先生に過ぎません。張先生のすごいところは、こころ構えです。僕に刺したツボは、他の患者さんとほぼ同じで、どのような病気であろうとも、ほぼ共通しています。言い換えれば、基本穴だけの治療ということになります。基本穴の治療だけです。日本で言えば本治法でしょうか。経絡治療の父たる八木下勝之助を彷彿とします。

 張先生のこころ構えとは、まさに「挽かぬ弓、放たぬ矢にて射るときは、中らず、しかもはずさざりけり」(『鍼道秘訣集』に書いてあります)。この文章の意味をやっと理解できるようになったのは、沢庵の『老子』のおかげ。治ると確信していれば、治療をしなくても(もちろん治療しても)必ず治る。つまり、治療する前に、結果が出ているのです。勝負がついたというか。そのこころ構えの盤石さが、張先生のすごさだと思います。きっと、同じ配穴をまねをしても、効果は出ないでしょう。

 技術だけでは不十分。こころ構えの修行が不可欠であることがわかってきました。やっぱりはな垂れ小僧でした。どのようにして、盤石になったのかは、わかりません。人格と、場数を踏むことと、勉強なのでしょうか。失敗の繰り返しかもしれない。『内経』との格闘かも知れません。

 去年は気がつかなかったことが、今年気がついたのは、はな垂れ小僧も進歩したなと思った次第。





 


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