2024年1月30日火曜日

『老子』四十二章

 『老子』四十二章に「道生一、一生二、二生三、三生万物」とある。池田知久『老子』(東方書店)は云う。

 その「一」とは、まだ「一気」や「太極」のようなルーティーン化した具象的な思想概念とはなっていない。「道」が生じた漠然たる未分化な原初的な統一体とでもいうべきものである。

 「二」は「陰・陽」または「天・地」などに当て、「三」は「天・地・人」または「陰・陽・和気」または「形・気・質」などに当てる見解が多いが、漠然たる未分化な原初的な統一体が次第に分化していうプロセスを一般的に述べたものであって、そのような後代のルーティーン化した具象的な思想概念で把握するのは不適当ではないだろうか。

 どの注釈家も、「一」、「二」、「三」が、何に相当するかの解答を用意している(したがる)。が、池田は、後世の知識に当てはめるな、ただ一般的に述べたものだ、と大鉈を振り下ろしている。なんてすばらしい。


 



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