2014年6月2日月曜日

医は仁術

 東京科学博物館で行われている「医は仁術」展も、あと2週間で閉幕する。さて、「仁術」とは、どういう意味なのか。

 「仁」を、人間形成の最重要ポイントとして取り上げたのは、孔子である。孔子の言行録である『論語』に、「仁」の用例がたくさんでてくる。したがって、「仁術」をしりたければ、『論語』をよむのが一番である。。

 驚いたことに、岩波文庫版の『論語』は、昭和63年の初版から、累計134万部が売れたそうである。初版が34刷、再版が24刷を重ねているから、単純に計算しても1刷で2万部。岩波文庫では、第4位の売り上げ数だそう。日本人は、『論語』が好きなんです。

 ところで、「医は仁術」というところの、現代の「医」の人は『論語』を読んでいるのだろうか。江戸時代ならば、東洋医学を指して「医は仁術」と言ったのだろうから、鍼灸家は「医は仁術」を重く受け止めなければならない。

 『論語』をよまなくても、仁術についてのレクチャーくらいは、どこかで為されなければならない。仁術を遂行するかどうかは、個人が選択すれば良いことだが、教養として、最低限の知識を共有しておきたいところだ。

 たとえば、伊藤仁齋の『論語』研究は、弟子の後藤艮山の灸術にも影響が及び、艮山の弟子の香川修庵も、仁術なるものを追求し、ついには灸術を深め、香川流灸法を確立させたように、仁術と灸法はとても近しい関係にある。

 こうした例をふまえても、 仁術をはっきりさせなければ、私たちの鍼灸は根無し草になるのではないかと、やや不安であります。

 
 6月14日(土)18時~21時、灸法臨床研究会の主催で、講演の機会を得たので、「仁術」のはなしを少しばかりする予定。講演の詳細は、「三景」のHPでご確認ください。

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