2024年2月13日火曜日

『老子』四章「和光同塵」

 池田知久は、「和光同塵」を「己の知恵の光を和らげて、塵のような渾沌たる世界と一つになった」と訳し、「自分の能力を包み隠して俗世間と交わる」という意味の処世訓として有名である。しかし、この理解は「和光同塵」の正しい意味を把えそこねた通俗的な解釈であるという。(池田知久『老子』講談社学術文庫

 「塵」を一般的には俗塵の意味にとるが、池田は「道」の渾沌の意味にとるところが異なる。出典の四章では「挫其鋭、解其紛、和其光、同其塵」となっていて、「解其紛」と対になっている。「紛に解けこむ」「塵と一体になる」=紛・塵に解けこむ・一体になる、となり、この紛・塵が「道」の渾沌を表していることをいう。

 そもそも「包み隠して俗世間と交わる」とは、包み隠すことは人為であるから『老子』は言わない。やはり、小賢しい知恵を捨てて(人為を捨てて)、道と一体になる、が本意である。


 






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