2019年12月18日水曜日

九鍼十二原篇

『霊枢』の九鍼十二原篇は、兵家思想の影響が強いので、読み手に兵家思想の下地がなければ、真意はわからないでしょう。

 東洋学術出版社の訳などは、気持ち悪いほど的をはずしています。古典がいかようにでも解釈できる、その悪い面が出ています。

 善が書いてある『論語』は、善なる人が読まなければ、真意がわからないのと同じです。

 漢文が読めれば『霊枢』が読めるわけではなく、鍼灸の臨床をしていれば、『霊枢』が読めるわけではなく、それぞれの篇の思想を踏まえない限りは、奥には入り込めないでしょう。

 ピアニストの千住真理子さんが、ストラディバリのデュランティという名器を入手したときのコメント。

「とても手ごわい相手で、小手先のテクニックなど通用せず、これは自分を根本から変えないと弾きこなすことができないと思いました」

「生活のすべてを変えたため、どんどんストイックになり、趣味や遊びや余計なことは全部すてました。すべてはいい音楽を奏でるため、自分が納得のいく演奏をするためです」

 同じように、古典の奥域に入るためには、土台からのしきり直しが必要なのだとつくづく思いました。

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