2011年12月25日日曜日

平成の大校正(5)

平成23年の大校正作業は、昨日(12月24日)で幕を閉じました。平成24年は1月14日(土)午後2時から始まります。
 底本の江戸医学館本は、1849年に刊行されたもので、鶯谷書院にも架蔵されています。160年前に刊行されたとは思えない、綺麗な和本です。原本は、鎌倉時代に北条氏が所持していたもので、金沢文庫の印があります(江戸医学館本から500年前と序文にあります)。中途の経由は不明ですが、米沢の上杉氏の所蔵となり、それを借り受けて影刻されたものが江戸医学館本です。
 塩竈神社境内に「文治の燈籠」なるものあり。文治3年(1187)奥州藤原三代秀衡の三男、泉三郎忠衡により寄進されたもので、芭蕉が参詣した折り、『奥の細道』にこの燈籠についても記し、「五百年来のおもかげ、今目の前に浮かびて、そぞろに珍し」とあるのを、ふと、思い出した。
 本年5月に塩竈に行ったとき、これが芭蕉がみた灯籠なのかと感慨深かったのだが、この『千金方』もほぼ同じような運命をたどったのかと思ったら、この地道作業はやっぱり天命なるそ。

2011年12月20日火曜日

平成の大校正(4)

大校正では、12月17日(土)にて、『脈經』の校正が終了しました。ひきつづき、24日(土)から『千金方』を校正します。ふるってご参加下さい。『千金方』の校正は、半年から1年はかかるかと思います。こういう地道な作業が、古典の世界を支えるわけですから、実に意義深い。考古学は、地道な発掘作業が基本になりますが、古典の世界とて同じ事。その古典の世界を基礎にして鍼灸医学が成立しているのですから、校正作業がいかに大切な仕事であるか。天命です。
 1月は、14日・21日・28日、それぞれ2時から5時までです。
 天命で、地道を歩きたい方、ぜひ来てね。

2011年12月14日水曜日

論語の会

毎月第2土曜日11時から13時まで、論語を読む会を行っています。参加費無料です。
 『論語』は誰しも聞いたことのある東洋の大古典です。東洋医学に志しながら、『論語』を読まないのは罪であると思って、数年前から東洋鍼灸専門学校の課外活動の一環として行ってきました。卒業後も、ひきつづき『論語』を読みたいという仲間が集まっています。
 興味ある方は、ご参加下さい。
 『論語』なんかとお思いかもしれませんが、今はブームですよ。一般の方が、よく勉強しています。ちなみに、講談社学術文庫の奥付を見て下さい。毎年増刷しています。
 東洋医学を標榜しながらまるっきし知らないのでは、サギみたいなものです。難しい内容は無いのですが、古典と聞いて足踏みしている人が多いようです。鍼灸界には。
 目の前のハエを追うのも大事ですが、根本的なことを確認するためには、『論語』は欠かせない東洋の古典です。

2011年12月12日月曜日

平成の大校正(3)

故島田隆司先生が伝統鍼灸学会会長のとき、「伝統鍼灸大学構想」を立ち上げました(在任中に亡くなったのですが)。とても夢のある構想でした。先生亡き後は、その構想は霧消しました。大学を作るには相当な資金が必要ですから、誰しも、その後を継ぐ者は現れませんでした。その当時、九州国際大学の石田秀実先生も、エールを送ってくれていました。また、古典のデータ化を強く望んでいました。この平成の大校正は、石田先生の講演に発奮したものでもあります。
 今現在、古典データは大いに活用しています。研究がより速やかに進むという点で、将来も役立つものと信じています。ただし、あくまで道具の一つなので、最終的には自分の目で現物を確かめる作業を怠ってはなりません。
 伝統鍼灸大学は、ただ箱物を作っても、どのような教育にするのかを明らかにしない限りは、名前が伝統鍼灸大学というだけで、今までと同じ教育を踏襲するだけです。伝統鍼灸的な経穴学とはなんぞや、経脈学とは、診察学とは。このようなことを設立の前に煮詰めておかねばなりません。そういう意味では、これから10年、新しい教育を作るという目標をもつと、楽しみであります。
 在学中のみなさんは、どのような教育を望んでいますか?
 卒業したみなさんも、どうですか?
 今のままで、良いですか?

2011年12月6日火曜日

安徽中医薬大学

数年前に、招待されて、安徽中医薬大学に行きました。通訳さんを連れて行きましたので、その分は自腹ですので、無料というわけではありません。上海から飛行機で1時間くらいのところで、省都は合肥市で、ふと思い出したのですが、学生は2万人です。校舎をバックに写真を撮ろうとしても、校舎全体は写りませんでした。池袋西武デパートみたいに、橫に広い校舎でした。 日本の鍼灸専門学校で多くて1000人くらいですから、その規模たるや、推して知るべしです。そういう所にばかり居ると、間違いなく井戸の中の蛙になってしまいます。
 合肥では、キノコ料理、野菜料理が多くて、連日の中華料理でも、胃にもたれませんでした。日本の中華料理は、どうみても、中国料理日本版であって、本場のとは違うよう。まだ、中国で、酢豚とか、ちんじゃおろーすとか、八宝菜とか、見かけたことないですねえ。杏仁豆腐のデザートにもありつけてません。これまた数年前に、安徽省の黄山に行って、北京に戻ったら、北京の料理はくさくて、食べたくありませんでした。
 ① 日本の中華料理は、日本独特。② 中国の中華料理は、地方地方でいろいろな特色がある。
なので、①から②をみたり、②を単一の料理と思うのは、おおきな誤解です。この観点から鍼灸をみても、同じような気がします。

2011年12月4日日曜日

十元

鶯谷書院の立ち上げ者、十元とは、宮川浩也のことで、日本内経医学会が上海中医薬学院(現上海中医大学)との学術交流のとき、レストランで、ウエイトレスに「ぼくは何歳に見えますか」と聞いたら「十元」という答えが返ってきて、そのまま字(あざな)に採用しました。「ハウ オウルド」を「ハウ マッチ」と誤ってので、「ふふ、あなたは、十元ね」という答えに成ったんだと思います。

2011年12月2日金曜日

丹塾古典部(3)

丹塾古典部の第2部門では、3回にわたって、張家山医書の『引書』を読みました。導引にかんする医書という意味です。馬王堆医書にも『導引図』がありますが、細かな説明がなかったので、導引とはどのようなものか、今ひとつ理解できませんでしたが、『『引書』を細かに読むことによって、概略をつかむことができましたし、これから『黄帝内経』に発展するだろう道筋も、なんとなく見えてきました。
 中医学は理路整然としていますから、街歩き。日本の鍼灸は未整備ですから山歩き。出土医書は、未整備もなにも、地図もないので、開拓歩き。どこに何があるやら、実に楽しいのであります。迷路を歩く楽しさに近いものがあります。
 呼吸法といえば、長呼短吸とか、丹田呼吸とか言われるけど、『引書』では3種類の息を吐く方法を駆使しています。この方法は『備急千金要方』に受け継がれますが、今は伝わっていません。せっかくの叡智を、受け継がないのは、実にもったいないソ。